山形大学

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磁化履歴曲線のごとく
(2008年6月)

 私事でしかもマニアックな話で大変恐縮なのですが、‘今月の話題’を綴らせていただきます。
私は約20年前、当時共通講座の工業物理講座(現数物学分野)で講師でおられた宗像先生(現崇城大学教授)に大学院進学時に強く勧められて磁性薄膜材料研究に携わらせていただき現在に至っております。当時の研究室は大坪名誉教授と佐藤(雄)助手(元弘前大教授)、四釜技官(現専門職員)が磁気記録に関する研究を行っておられました。私も磁性薄膜をスパッタ法と呼ばれる装置で作製し、真空中熱処理して、その薄膜試料の磁気的な性質を研究室の傍らにある大きな青い装置で測定するという一連を繰り返すスタイルで研究を行っておりました。この青い装置は振動試料型磁力計(Vibrating Sample Magnetometer)通称VSM というもので、当時数千万円したと聞いています。学生であった自分には、途方もない価格で、壊してはまずいとの思いばかり・・・。さらに、マニュアル操作とはいえ、今になって見ればシンプルで比較的簡単な部類の装置なのですが、当時は、ボタンとスイッチだらけで、順番を間違えないようにしなければ!と測定時はずいぶん緊張していたことを思い出します。

 このVSMという装置には大きな磁場を発生する電磁石があり、この電磁石の磁場中に入れると試料は磁化されて試料から磁束が漏れます。この漏れた磁束をコイルで検出すれば、試料の磁化がわかります。しかし、そのまま試料を入れておくだけではだめで、試料を磁場中で上下に振動させ、コイルを貫く磁束を時間変化させることで発生した電圧をアンプで増幅して読み取り試料の磁化を測定します。試料に与える磁場を変えることで試料の磁化と磁場の関係、つまり磁化履歴曲線がX-Yレコーダーの赤いペンで描かれます。このため、これを通称ペンレコと読んでいました。たくさんパラメーターをふった試料の磁気的な性質を調べるため、方眼紙をあまりにもたくさん使うので、「測定に失敗ばかりしているのではないか?」と言われたこともありましたが、今ではペンレコはPC計測に置き換わり、そんなことを言われることも無くなりました。

 毎年、卒業研究生や大学院生の研究が佳境に入る雪が舞う頃になると、測定時間が長くなることもあってか、VSMの電磁石電源や操作パネルがうんともすんとも言わなくなり、その都度、メーカーに問い合わせてトラブルシュートの方法をFAXで流してもらっておりました。そのFAX用紙を片手に故障したパーツを見つけるために、操作パネルや電源ラックをばらしたものでした。その後落ち着いて、中身の回路基板を取り出し、テスター片手に数百個ある抵抗やトランジスターなどのパーツの端子を一カ所づつ、チェックするという作業を研究室の学生達と手分けしてやって、なんとか発表用にデータを間に合わせることもありました。

 今でも、このVSMを使っいる学生に「装置が変です!」と言われ、調整修理が必要なこともたびたびですが、数個Co原子とPdが交互に積層された非常に薄い薄膜やNd-Fe-Bという世界で最強の永久磁石の薄膜などを測定限界のギリギリのところで測定しています。最近はこの装置をさらに大きな磁場が発生できる超伝導マグネットと組み合わせた強磁場VSMを立ち上げています。近年、数物学分野に着任された加藤教授が提案されている高性能な磁石をつくるための‘新しい指導原理’を実証するために活躍してくれると思います。

 タイトルが「磁化履歴曲線のごとく」なのに、文章のどのあたりが?と思われると思います。なかなかうまいことが言えないのですが、永久磁石では磁気の履歴性はエネルギーを蓄えるために必要です。しかし磁気センサーやヨークと呼ばれる磁束を集めて流しやすくするパーツにとっては、これはエネルギーロスにもなります。何事も見方・使い方でポジティブにもネガティブにもなると思うのです。最後に無理矢理な感じなのですが、「履歴」=「歴史」だとすれば、歴史をポジティブな眼差しで捉え、今後に生かしていければなぁと思いつつ・・・‘今月の話題’を閉じたいと思います。


小池 邦博(こいけ くにひろ)
数物学分野 助教小池邦博

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