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島貫 洋
山形大学工学部は、計測工学・制御工学の東北の雄
−100年の中の新しい分野での研究・教育の発展−

(2008年12月)

 百年史誌部会外からの初登場ということですので、はじめに自己紹介をお許し願います。
  私は、1973年に当時の電気工学科電気第1講座(電気理論)の小野寺力男先生のご指導で「過渡現象の代数的取り扱い」という先生の期待にはほど遠い修士論文をなんとかまとめあげて修了しました。同時に私が四半世紀を過ごした故郷の米沢・東置賜地域を婚約者とともに離れ、上京しました。その後、2つの会社で工業計器・制御システムの技術者として32年間働き、そしてお世話になった計測・制御の学界と業界の研究者・技術者の方々の学会活動のお手伝いをさせていただくようになって3年が過ぎようとしているところです。当時の婚約者ともども60歳を迎え、工学部入学から数えて40年以上、山形県出身の藤沢周平に言わせれば、「ふるさとへ廻る六部は気の弱り」かもしれませんが、母校100周年に自身の過去を重ねて見る気持ちも強くなっているようです。

大成功だった先月の第51回自動制御連合講演会
 先月22日-23日に工学部で大久保重範先生が実行委員長としてまとめられた第51回自動制御連合講演会が開催されました。 
 この講演会は、計測自動制御学会(The Society of Instrument and Control Engineers; SICE)、日本機械学会、システム制御情報学会が3年おきに幹事学会となって開催され、日本の計測・制御・システムに関連するすべての学会がその枠を超えて協力し、最新の理論と技術を討論する場で、半世紀もの長い歴史を持ちます。今年は、新たな半世紀のスタートとなるもので、これが米沢で開催されたことは、この学問分野で山形大学工学部が重要な役割を果たしていることを示しているといえます。SICEが幹事学会をつとめましたが、大久保先生をはじめ工学部の数多くの先生方のご努力が実り、全国から計測・制御・システムの分野の研究者が米沢に集い、発表論文数312編、参加者数約500名という当初の予定を大きく上回る成功を収めました。
 講演会の特別講演では、上杉家17代当主の宇宙航空研究開発機構名誉教授の上杉邦憲先生の小惑星探査機「はやぶさ」についての講義がありました。先生は、この講演会の主催学会の一つでもある日本航空宇宙学会でも活躍しておられ、大変時宜に適ったものとなり、参加者の好評を博しました。

第51回自動制御連合講演会

 折しも来年のNHK大河ドラマ「天地人」が上杉家入封時の米沢藩開発リーダーの直江兼続の物語とあって、米沢市の歓迎ムードが最高潮の中でしたので、参加者の方々は晩秋の米沢の風情と味と人情も十分に堪能されたのではないかと思います。

山形大学工学部の計測・制御・システム分野のあゆみ
 この記念すべき講演会の折りに訪れた会場の工学部で、幾人かの先生方にインタビューさせていただきました。それに、SICE事務局にある記録も加えて山形大学工学部の計測・制御・システム分野のあゆみを以下に簡単にまとめてみます。お伺いできなかった先生方もたくさんおられますし、私の記憶違いや誤りについてはお許し願いたいと思います。

 工学部では、1991年に赤塚孝雄先生(現山形県立産業技術短期大学校)が実行委員長となりSICEの30周年の記念全国大会が開催されています。それに先立つ1985年にはSICEの第5回Dynamical System Theory Symposium(DSTシンポジウム:2001年よりSICE制御部門大会として継承)が渡部慶二先生のとりまとめで開かれました。今回の自動制御連合講演会を含むこの3つの大会は、計測・制御・システム、とりわけ自動制御の分野では規模も大きく重要な講演会、それらのすべてで山形大学工学部が実行主体となっていることは、工学部が1970年代からこの分野の研究と教育で全国的にも主導的な地歩をかため続けてきたことを意味しています。100年の歴史のなかで、数多くの工学およびその応用技術で日本の産業界に貢献してきた工学部ですが、電気、機械、化学、繊維・物質などの伝統的工学とは異なる、基礎理論を含む分野横断的である計測工学・制御工学・システム工学が花開いたことは、常に時代の先端技術に取り組む工学部の精神が活かされた歴史の事例として特筆されるべきものと思います。

 この分野での工学部における発展の系譜には、大きく分けて3つの流れがあろうかと思われます。
 一つは、電気系におけるものです。今、モデルブリッジ制御という新しい提案をされている渡部慶二先生は、私が在学中の1970年ごろは電子回路がご専門でしたが、チョッパ増幅器の安定問題から制御理論の研究を手掛けられ、70年代後半にはむだ時間系の制御ではSICEでも著名になられました。そして、前述の1985年の工学部でのSICE第5回DSTシンポジウムをとりまとめられることになったわけです。渡部先生は工学部プロパーで、もともとは制御分野の方ではないにもかかわらず、他大学の先生方との交流を積極的に継続されて現在の地歩を築かれました。
二つ目は、機械系です。1988年に大久保重範先生が東大から着任されました。制御理論研究の本流の一つである東大計数工学科で非線形レギュレータの専門家としてご活躍でしたが、工学部での機械工学研究の環境にいち早く対応され、ご専門のテーマをコアとしつつも、遺伝的アルゴリズム、ファジィ、ニューラルネットワークなどを使った新しい制御からCAD/CAMシステムやコンピュータ・グラフィクスの研究などの応用面まで現在の工学部の機械系にふさわしい計測・制御・システムの分野を確立されました。
 三つ目は、情報系ですが、これは1983年の情報工学科の創設とそれに先立つ工業短期大学部での取り組みも含む工学部にそれまでになかった新しい場におけるものです。赤塚孝雄先生、出口光一郎先生(現東北大学)、北嶋龍雄先生、田村安孝先生、平中幸雄先生などが相前後して着任され、新生情報工学科の課程づくりから運営の立ち上げに大変な努力をされつつ、画像計測と生体計測を中心とする新しい分野を工学部に創られました。その後の情報系の現在にいたる発展の歴史はこのゼロからのスタートの誠意と気概が源になっていることはいうまでもありません。

第51回自動制御連合講演会

 工学部における計測・制御・システムの分野の35年ほどの歴史を駆け足でたどって見ましたが、1)異分野への挑戦、2)伝統分野での新展開 そして3)新分野の創造 という学問・技術の発展にとって欠かせない3つの自律的な努力がうまく融合されて現在にいたっていることがわかります。これは、電気、機械などの伝統的学科の中にも新しい基礎的横断型の分野を受け入れる素地があったことを示すもので、1910年(明治43年)の米沢高等工業学校創立以来の、さらには米沢藩校興譲館時代からの学問を尊ぶ精神の表れともいえます。

山形大学工学部の計測・制御・システム分野の今後に期待して
 さて、今後はどうでしょうか。上で述べた3つの流れは、現在の応用生命システム工学科、機械システム工学科、情報科学科を中心として引き継がれているかと思います。そして、21世紀の社会と産業に貢献する新しい山形大学工学部と大学院理工学研究科における計測・制御・システム分野の研究者集団が着実に成長しています。今回の第51回自動制御連合講演会の実行委員会でお骨折りいただいた中堅、新進気鋭の先生方を含む総合力がいかんなく発揮されることと思います。今回のインタビューで渡部慶二先生がおっしゃられていた「理論とコンピュータと実験の組み合わせ」という工学部における研究と教育の方針が継続、発展し、新しい融合・総合工学の東北の、さらに、日本の砦となることを期待しています。

 私ごとになりますが、いまから35年以上前の在学中には、学部・大学院を通して、電気計測、自動制御、制御特論と履修した計測・制御関係の単位は一つも取得できませんでした。不出来な学生だったことはいうまでもありませんが、当時の工学部が、計測・制御・システムの分野での研究と教育の萌芽期にあったのだとも思っています。そのような私が、何の因果かその分野の仕事で生活をして35年間を過ごしました。工学部の35年の歴史と重ね合わせて振り返る今、計測・制御・システム分野の学会事務局の一員として、もう理論や技術面でお役に立てることはできませんが、山形大学工学部を含む日本のこの分野の発展のためのお手伝いに今しばらく頑張りたいと思いますので、SICEも含めて今後ともよろしくお願いいたします。

E修48 島貫 洋(しまぬき よう)
(社)計測自動制御学会 事務局長

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